「送る」ボタンの前で、5分固まった
暗号資産を買うところまでは進めたのに、送金でつまずく人は多いはずです。わたしもそうでした。銀行の振込なら何十回とやってきたのに、同じ「お金を移す」作業なのに、画面の前で急に自信がなくなる。
この記事は、その怖さを分解する記事です。手順書としてではなく、「どこで何を確認すれば怖くなくなるのか」という順番で書きます。使ったのはGMOコインのアプリで、ソラナ(SOL)を他社の取引所へ送りました。画面はすべて実際のものです(機微な情報は伏せています)。
先に結論:8時24分に始めて、8時25分に終わった
撮影したスクリーンショットの時刻表示を並べると、こうなります。
- 8:24——送付画面を開き、宛先を確認し、数量を入れた
- 8:25——SMSの認証コードを入れ、実行し、「ご送付を受け付けました。」が出た
コンビニでおにぎりを買ってレジを通す時間と、だいたい同じです。5分固まっていた時間のほうが長かった、というのが正直なところでした。
ただし前提があります: この1分に、宛先の新規登録にかかる時間は含まれていません。初めて送る相手の場合は、後述する「宛先リストへの登録」が別に要ります。実際にはここが本体で、送金作業そのものは付け足しのようなものでした。
怖さの正体は、3つしかなかった
何が怖いのか、送る前に自分で言葉にしてみました。出てきたのはこの3つです。
- 宛先を間違えたら戻ってこないのが怖い
- 知らないことを聞かれて、答えを間違えそうなのが怖い
- 送ったあと、着くまでの時間が怖い
逆に言うと、この3つに答えが出れば怖くなくなるということです。以下、実際の画面で1つずつ潰していきます。
ステップ1:通貨を選ぶ
「暗号資産預入・送付」から入ります。保有している通貨が並ぶので、送りたいものを選びます。

通貨を選ぶと、タブが「預入 / 送付 / 宛先リスト」に切り替わります。預入(うけいれ)が受け取り、送付が送る側です。ここを取り違えると、自分のアドレスをコピーして自分に送ろうとすることになります。最初の分かれ道はここでした。
ステップ2:宛先リストに登録する(ここが本体)
GMOコインでは、送る前に相手のアドレスを「宛先リスト」に登録しておく方式です。送信のたびにアドレスを手打ちする画面は、そもそも存在しません。

この設計が、じつは怖さの1つめをかなり削ってくれています。アドレスを確認する場面と、送る場面が分けてあるからです。落ち着いてアドレスを合わせる作業と、金額を決めて実行する作業を、同時にやらなくて済む。
画面の上部に、こういう注意書きが出ていました。
SNSで投資勧誘や暗号資産の送付依頼を受けた場合、詐欺行為の可能性があります。
宛先を登録するまさにその画面に置かれています。詐欺の被害は「操作を間違えた」ではなく「間違った相手を正しく登録してしまった」という形で起きる、ということでしょう。この見分け方は別記事にまとめてあります(暗号資産の詐欺を見分ける3つの確認)。
実名まで聞かれて、一瞬ひるむ
「新しい宛先を追加する」に進むと、聞かれることが思ったより多いです。送付先はGMOコイン以外か/相手は取引所のウォレットか個人のウォレットか/受取人は本人か他人か/個人か法人か。そして受取人の氏名(漢字・フリガナ・アルファベットの3種類)と、住んでいる国と都道府県まで。

トラベルルール(送金者と受取人の情報を取引所どうしで通知し合う仕組み)のための入力です。銀行の振込用紙に依頼人の名前を書くのと同じことを、暗号資産でもやっている。そう捉えると、質問の多さは急に理解できる形になりました。疑われているのではなく、記録を残しているのです。
根拠になっているのは犯罪収益移転防止法(犯収法)で、業界団体である日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)は、会員の取引所が暗号資産を移転するとき「移転先の暗号資産交換業者へ通知することが必要」と案内しています(JVCEA「トラベルルール対応についてのお知らせ」2023年3月22日)。通知する相手は「受け取る側の取引所」です。入力した氏名が世の中に公開されるわけではありません。
ここで、宛先登録の最初に聞かれた「送付先ウォレットは取引所のものか、個人のものか」という質問の意味も分かります。取引所あてなら通知先が存在しますが、個人のウォレットあてには通知する相手がいないため、扱いが変わるのです。だから最初に分岐を聞かれます。
この画面で、もう1つ重要な文言があります。
宛先情報の変更はできません。変更したい場合は新規宛先登録をお願いします。
登録したら直せない。だから最後に「登録情報が最新かつ正確であることを確認しました」のチェックがあり、これを入れるまで「次へ」はグレーのままで押せません。押せない状態にしておく——これは、ひと呼吸置かせるための設計です。
ステップ3:数量と「送付目的」を入れる
宛先が決まれば、あとは数量です。ここで初めて金額の話になります。

画面には「送付1回あたりの最小数量は0.1 SOLです。」と書かれていました。今回送ったのはちょうどこの0.1 SOL。つまりこの通貨で試せる、いちばん小さい額です。初めての宛先にいきなり全額を送らずに済むのは、精神衛生上かなり大きい差でした。
そして、ここでつまずきました。「送付目的」が未入力だと、黒いバルーンで止められます。
選択肢の意味は画面の注記に書いてありました。他社の口座で売るつもりなら「暗号資産の売買・交換」、ウォレットや他社口座に置いておくだけなら「暗号資産の保管」。今回は預けておくだけなので後者を選びました。迷ったら、注記のとおりに選べば済みます。ここは自分で言葉を考える欄ではありません。
ステップ4:SMSの2段階認証
「SMSで2段階認証コードを受け取る」を押すと、登録した電話番号に6桁のコードが届きます。入れて「確認画面へ」。

この画面の下に、長い【ご注意】があります。読み飛ばしたくなる場所ですが、送金の不安に対する答えは、だいたいここに書いてありました。要点だけ拾います。
- 1回の下限は0.1 SOL。1日の上限は100,000,000円相当(この日は8,252 SOLと表示)。上限は毎日6:00にリセット
- 「誤ったソラナアドレスに送付した場合、取り戻すことはできません。」
- ソラナの送付について、GMOコインは送付手数料を徴収していない。ただし送付先で手数料が徴収され、利用者負担になる場合がある
- 送付先がトラベルルールの通知対象の場合、通知先の取引所が内容を確認した後に送付処理が行われる
- その確認が依頼から24時間経っても完了しない場合、送付は自動的に取り消される
最後の1行が、怖さの3つめ——「着かない時間」への答えになっていました。行方不明にはならず、24時間で自動的に取り消されて戻る。永久に宙に浮くわけではないと分かっているだけで、待ち時間の性質がまるで変わります。
ステップ5:最終確認と、3つのチェック
確認画面には、宛先名称・アドレス・受取人氏名・送付数量・送付目的が並びます。ここが読み上げるべき場所です。

そして下にスクロールすると、いちばん驚く画面が出てきます。

チェックが3つ。外為法の規制対象取引に該当しないこと。受取人や実質的支配者が北朝鮮居住者でないこと。マネー・ローンダリングやオンラインカジノの利用その他の犯罪に関係しないこと。
初見だと身構えます。ですがこれは、空港の手荷物検査で「危険物を持っていませんね」と聞かれるのと同じ性質のものです。全員に同じ質問をすることに意味がある。自分が疑われている質問ではありません。
「実行」を押すと、この画面が出ます。

あっけないほど短い一文でした。
怖さの答え合わせ
最初に挙げた3つに、実際の画面で答えが出ました。
- ①宛先を間違えたら戻ってこない→ これは事実で、変わりません。ただし送るたびに手打ちする場面がない設計になっていて、アドレス確認と送金実行が別の日にでも分けられます
- ②知らないことを聞かれる→ 聞かれる内容はトラベルルールと法令確認で、答えは全部その場の注記に書いてありました。自分で判断して埋める欄はほぼない
- ③着くまでの時間→ 通知先の確認待ちがあり、24時間で完了しなければ自動で取り消される。消えるのではなく戻る
それでも残るリスク
怖くない理由ばかり並べたので、消えない部分も書いておきます。
- アドレスの誤りは取り戻せません。これはGMOコインの画面にもはっきり書かれています。宛先リストという安全装置があっても、登録するときに間違えたアドレスは、間違ったまま登録されます
- 手数料はゼロとは限りません。今回のソラナはGMOコイン側の送付手数料が無料でしたが、これは通貨によって違いますし、送付先で徴収される場合は利用者負担と明記されています。送る前に、その通貨の条件を画面で確認してください(ガス代と手数料の正体)
- この記事は1回の記録です。通貨が違えば最小数量も手数料も変わり、送付先が国内か国外かでも扱いが変わります。金額や条件はそのときの画面が正で、この記事の数字ではありません
- 他社口座で売る目的の送付は、税金の話につながります(暗号資産と税金の基本)
次に送るときのチェックリスト
この5つだけ、スマホに残しておけば足ります。
- 受け取り側のアドレスをコピーで持ってきた(手打ちしていない)
- 受け取り側が指定する通貨とネットワークが、送信側の選択と一致している
- 初めての宛先は最小数量でテスト送金した
- 最終確認画面で宛先・数量・目的の3点を声に出して読んだ
- 受付後は何もしない(着かないからといって、もう一度送らない)
送金が怖かったのは、取り消せないからではありませんでした。確認する場所を知らなかったからです。場所さえ分かれば、あとは読み上げるだけの作業でした。ウォレットとアドレスの関係そのものが曖昧な方は、先にウォレットと秘密鍵を読んでおくと、この記事の画面がもっと素直に読めるはずです。
この記事の画面について(2026-07-29)
- 掲載した画面は、すべて運営者本人の口座で2026年7月29日に実施した送付操作を撮影したものです。引用した文言は、その画面に表示されていたものをそのまま引用しています。
- 氏名・居住地・アドレス・QRコード・認証コード・保有数量は、公開前にマスキングしています。送付数量(0.1 SOL)は、最小数量ちょうどであることが本文の要旨に関わるため残しています。
- 画面構成・手数料・数量の上下限・トラベルルールの運用は変更されます。実際に送付する際は、必ずその時点の画面と公式の案内をご確認ください。
参照した公表資料(2026-07-29にアクセスし、記載内容を確認)
免責事項
- 暗号資産の取引は価格変動リスクを伴います。投資判断はご自身の責任でお願いします。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄・取引所・サービスの推奨や、利益を保証するものではありません。
- 本記事は運営者の1回の操作記録であり、すべての通貨・すべての送付先で同じ挙動になることを保証するものではありません。
- 記載内容は執筆時点(2026年7月)の情報です。手数料・数量制限・法令・各社の運用は変更される場合があります。
