暗号資産の申告は、まだしたことがない
確定申告そのものは、何度かしたことがあります。ただし暗号資産の利益を申告したことは、まだ一度もありません。だからこの記事では、申告書の書き方は扱いません。書けるのは、その手前——申告が必要になる前に、何を知って、何を準備しておくべきかまでです。
先に結論を4つ置きます。
- 暗号資産の利益は、日本円に戻していなくても課税されることがある
- 2028年から税率20%の分離課税へ変わる見込み。ただし今年の分は従来どおり
- 本当に怖いのは税率ではなく、利益が出る時期と支払う時期のずれ
- 今すぐやるべきは申告ではなく、記録と計算
2028年から20%へ。ただし今年の分は変わらない
2026年7月15日、暗号資産を金融商品取引法の対象に位置づける改正法が国会で成立しました。これに合わせて、税金のかかり方も変わります。
令和8年度税制改正大綱では、対象となる暗号資産の利益に20%の申告分離課税(所得税15%+住民税5%)を適用すること、損失を3年間繰り越せるようにすることが示されています。「申告分離課税」とは、給料など他の収入と合算せず、その利益だけを切り離して一定の税率で計算する方式です。株式や投資信託と同じ扱いになる、と考えると近い。
ここが、いちばん誤解されやすいところです。
適用されるのは、改正法の施行日が属する年の翌年1月1日以後の譲渡からとされています。施行時期から逆算すると2028年からと見られており、2026年分と2027年分は、これまでどおりの計算です。今年動かした分に新しい税率は使えません。
また、対象は「特定暗号資産」に限られると書かれており、どの銘柄がそこに入るのか、細かい条件がどうなるのかは、この先の政令などで決まります。現時点で確定しているのは方向性と大枠までで、施行日と対象範囲が固まった時点で、この記事は書き直します。
怖いのは税率ではなく「時間差」
暗号資産の税金でいちばん実害が出やすいのは、税率の高さそのものではありません。利益が確定する時期と、税金を払う時期がずれていることです。
- 利益が出るのは、その年の1月1日〜12月31日
- 申告と所得税の納付は、翌年の2月16日〜3月15日
- 住民税はさらに遅れて、翌年6月ごろから納付が始まる
この数か月のあいだに相場が半分になっても、確定した税額は下がりません。利益が出た年に使ってしまえば、払う段になって手元にない、ということが起こり得ます。
2017年の相場で大きな利益を出した人の中に、翌年の暴落と納税が重なって行き詰まった例があったことは、当時を扱った書籍でも繰り返し触れられています。相場を外したからではなく、税金の時間差に備えていなかったからという筋の話です。
課税されるのは「日本円に戻したとき」だけではない
日本円に換金していないから関係ない、と考えている人がいます。ここが最初の落とし穴です。国税庁の説明では、暗号資産を「使用することにより利益が生じた場合」が課税の対象とされており、売却以外も含まれます。
- 売却して日本円にした
- 他の暗号資産と交換した(例:BTCでSOLを買った)
- 買い物の支払いに使った
- ステーキングなどで暗号資産を受け取った
2番目が特に見落とされます。日本円は1円も動いていないのに、交換した時点の価格で利益が計算される。取引所の中で銘柄を乗り換えているだけのつもりが、そのたびに計算対象が増えていきます。
「年20万円」の線引きと、住民税という別枠
会社員の場合、給与所得と退職所得以外の所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要とされています(国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」)。暗号資産の利益は、現行では原則として雑所得——給料や事業の利益などと合算して税率を決める区分——に入ります。
ただし、ここには続きがあります。この20万円の基準は所得税の話であって、住民税は別枠です。所得税の申告が不要でも、住民税の申告は必要になる場合があります。扱いは自治体によって案内が異なるため、お住まいの市区町村の窓口で確認してください。
そして20万円を超えるかどうかは、経費を引いたあとの金額で判断します。自分がどちら側なのかは、計算してみないと分かりません。この記事が「申告」ではなく「計算」を勧めているのは、そのためです。
今は、損をしても税金は戻らない
もう一つ、現行制度で知っておくべきことがあります。暗号資産で損失が出ても、給与など他の所得と相殺できず、翌年に繰り越すこともできません。
株式なら損失を3年繰り越せますが、雑所得は原則としてそれができない。利益が出た年には課税され、損をした年は何も返ってこないという非対称が、今はそのまま残っています。2028年からの分離課税では3年間の繰越控除が導入される見込みですが、それは先の話です。
この非対称は、勢いで銘柄を乗り換えるほど不利に働きます。SUIに惚れて負けた話で書いたマイルールは、税金の面から見ても筋が通っていたことになります。
計算が破綻する理由と、自分の取引件数
暗号資産の利益は「売った金額 − 取得にかかった金額」で計算しますが、同じ銘柄を何度も買い増していると、1枚あたりいくらで手に入れたことにするかを決める必要があります。その方法が総平均法(1年分をならして平均を出す)と移動平均法(買うたびに平均を計算し直す)です。損益計算ツールの画面でも、既定では総平均法が選ばれていました。
問題は件数です。積立をしていると、取引はこう積み上がります。
| 積立の頻度 | 年間の取引件数(積立分のみ) |
|---|---|
| 毎日 | 約365件 |
| 週1回 | 約52件 |
| 月2回 | 24件 |
| 月1回 | 12件 |
ここに売却と銘柄の乗り換えが乗ります。積立とドルコスト平均法で勧めている買い方は、税金の計算という観点では件数が増える買い方でもあります。
実際にわたしの2025年を数えたところ、72件でした。派手な売買をしたつもりはありません。それでもこの数です。これを手作業で、1件ずつ取得価額を追いながら集計するのは、現実的ではないと感じました。
損益計算ツールという選択肢
取引所から取引履歴を取り込むと、損益を自動で計算してくれるサービスがあります。わたしが使っているのはクリプタクトです。取引履歴を入れると、年別・銘柄別・取引所別に損益がまとまります。
ただし、無料で使い切れるとは限りません。ここが判断の分かれ目です。
- 無料プランの制約:取引履歴は年間10万件まで取り込めますが、公式の注記によると50件を超えると損益の計算結果が表示されません
- 件数の数え方:料金プラン上の年間取引件数は、まとめる前の件数で数えます
- 超えた場合:Basicプランは年6,600円(年間300件まで)
わたしの72件は、この50件を超えています。実際いま、画面では保有数量や評価額は見えているのに、取得単価と実現損益だけが伏せ字になっています。警告が出るわけではなく、静かに数字が隠れる。年6,600円を払うか、自力で集計するかを、こちらが選ぶことになります。
逆に言えば、月1回の積立だけで年12件なら、無料のまま計算まで完結します。まず自分の件数を数えるのが先で、有料プランの検討はその後です。
なお、対応通貨数や利用者数といった数字はサービス側の公表値です。判断の材料にするなら、自分の取引件数と、使っている取引所に対応しているかの2点で見るのが確実だと思います。
※以下は広告リンクです。お申込みがあった場合、当サイトが報酬を受け取ります。無料プランはメールアドレスのみで登録でき、クレジットカードの登録は不要です。
まずは料金プランと、自分の使っている取引所に対応しているかを確認するところからで十分です。
【CRYPTACT(クリプタクト)】
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今日やっておくこと
申告の時期は毎年2月です。今からできるのは、この3つだけです。
- 取引履歴をダウンロードしておく。取引所のサービス終了や仕様変更で、過去の履歴が取り出しにくくなることがあります
- 今年の取引件数を数える。無料の計算ツールで足りるかどうかが、ここで決まります
- 計算だけ先にやっておく。申告が必要かどうかは、金額が出てからでないと判断できません
取引履歴の出し方は取引所ごとに違います。口座開設からの手順はCoincheck口座開設ガイドにまとめています。
情報確認日:2026-07-28
税制および関連法令は変更されます。個別の判断が必要な場合は、必ず税務署または税理士にご確認ください。
免責事項
- 暗号資産の取引は価格変動リスクを伴います。投資判断はご自身の責任でお願いします。
- 本記事は情報提供を目的としており、特定の銘柄・取引の推奨や、利益を保証するものではありません。
- 筆者は税理士ではありません。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務相談に応じるものではありません。ご自身の税額や申告の要否については、税務署または税理士にご確認ください。
- 税制および関連法令は変更されます。記載内容は執筆時点の情報であり、施行日・対象範囲は今後の政令等で確定します。
